2016年 06月 24日
大人のセンス・オブ・ワンダー磨きの本 ~生物と無生物のあいだ 福岡伸一~
そうなると、読む本も都会的なものや、おしゃれな雑誌やエッセイや小説ではなく、自然への感性を研ぎ澄ますようなものばかりになってくる。
芸術的な自然への感性というよりも、科学的な感性ね。
そういうのが足りませんから。

数年まえにサントリー学芸賞を受賞した福岡伸一さんの「生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
日常の関心の大事が、晩ご飯のおかずのことだったり、電車の乗り換え案内の難しさだったり、食材宅配便の申し込みの締切期限程度な私には、
こういう本を読むと、いきなり自分も崇高な洞察力の深い人間になったかのように思えるのが不思議だ。
現に、こうしてブログに読書感想などを書くような時も、ちょっとインテリになった感じがしているという…。
「生物と無生物…」は、筆者のとても素敵なエッセイストのような導入、ニューヨークやマンハッタンのくだりからの科学の話への展開とか、図書館の野口英世の彫像の例えから、科学的な研究の話へ移っていくので、私のように普段生物とか、科学的な見方なんて全くしないような素人にも、ぐいぐい引き込まれて、
世界が、こんな未知なるものに満ち、生物学ってすごいわって、不思議な世界の扉を新しく開けてくれたような錯覚を起こしてくれる。
錯覚だから、難しい科学の解明とかが、錯覚で理解できたような気持になるということね。なかなか心地よい気分にしてくれる。
本当にすばらしい表現力の人なのだなぁ、理系の学者さんというと研究一途にと思うけど、大きく広い視野や、文学のふり幅がある人でいいなぁと思ったりしました。
対談集のほうは、大好きなレイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」を中心に据えて、関連の絵本や書籍の紹介まで丁寧に仕込まれた対談。
石井桃子、フェルメール、須賀敦子、バートン、「飛ぶ教室」「ちいさいおうち」「きことわ」「ドリトル先生」などなど、読書さんぽもかねているような対談集で、私の好きな興味が詰まったような対談集だった。
文中に、僕は「分子生物学者」だけど、もうミクロはとってしまって普通の「生物学者(読み方は、ナチュラリスト)」になるというくだりがあって、
もしかしたら、「普通のおばさん」も志さえ高ければ「普通のおばさん(読み方は、ナチュラリスト)」でもいい気がしてくる。
阿川さんのいつも通りのツッコミの切れ味ももちろんで、一気に読了。
曇ってしまって、感性のアンテナなどとうに錆びついてしまっていた、おばさんのセンス・オブ・ワンダーが、ちょっとだけ磨かれて、もう一度広がっていくような気分になった二冊。

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