読書家のお嫁ちゃんのママからの推薦で手に取った「
羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季
」という本が、体中に染みわたるビタミン剤のようなエッセイで、新しい知らない世界を体感するという本来の読書の醍醐味を感じた一冊です。
気になる本があると図書館アプリの「図書館日和」で本を登録、そのまま在庫のある図書館のHPへリンクしているので、予約を入れておきます。
すっかり忘れたころ、いつの間にか順番がきて、「あぁ、あの時話題に上がった本だった」という意外性もあって、自分がいつもは手に取らない書籍との新しい発見や出会いを楽しんいます。本当に便利なアプリ。
イギリスの湖水地方というのを知ったのは、子どもの頃に熱中したアーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」のシリーズ。
その後、長じてビアトリクス・ポターやワーズワースの湖水地方だと知識を重ね、小学生の子どもたちを連れてインド在住中に湖水地方を訪ねました。
たっぷりの滞在で、フットパスをあるいて湖水をめぐったり、羊の群れをのんびり眺めた至福の旅でした。
霧のような夏の雨、風、湖と山の折り重なる様子。
本には、その回想をさらに深める記述がいっぱいで、想像の翼で、湖水地方に飛んで懐かしさと新しい発見が満たされていました。
600年以上続くリーバンス家の羊飼いの話。本を薦められたときも、「ただただ羊飼いの暮らしの本ですよ。」というだけのことで、とても不思議でしたけど、読んでみたら本当に羊飼いの日常が淡々とつづられているだけ。それなのに、読み手をぐんぐん引き付ける魔法のような本で、すっかり翼が生えてあの湖水地方に飛んでいるかのよう。
読書の楽しみは、こういうことをいうのだなというのを実感させられました。
古い原始的にも思える脈々と続く放牧スタイル。
ひとりの羊飼いは、伝統の継承や、貧しい羊飼いの暮らしから一時期のがれオックスフォード大学へ進学もしながら羊飼いの暮らしは辞めない。
今は、もうこういう愚直な伝統の継承や、継続、自分の祖先とのつながり、特定の地域に暮らすコミュニティへの帰属、所属性の大切さなど、人類が営みとして大事にしてきた原点を呼び戻してもくれる一冊でした。
本国英国でのベストセラー(2015年)、アメリカでの人気、世界中での翻訳、日本ではようやく今年の翻訳出版に。
筆者は、日々の生活をツイッターでも画像をアップしていて、読後にフォローしたら、本にできてくる羊の認証票や、マークの色付け、羊の群れ度とに違う顔や毛並みの様子もよくわかり、面白さが倍増しました。
風邪ひき閉じこもり、新幹線移動とひとりの時間にじっくりページをめくり、読書家の至福を感じた一冊になりました。