おーい、はるかぜおきなさい。
もうすっかりはるです。
ひと月半ぶりに八ヶ岳です。
まだ、冬寒い森。芽吹きもようやくという感じ。
それでも春を告げるフキノトウが一面に可愛い花を咲かせています。
これをみるたびに、先のフレーズを思い出します。
こどもたちが、小学校二年生の時の国語の教科書にあった、工藤直子さんの「ふきのとう」の詩の1フレーズ。
新学期に音読の宿題では、わくわくした気分で読むという課題。
気分をだして「おーい、はるかぜおきなさい」と。
そして最後には、「「もうすっかりはるです。」というところを、自信たっぷりに言い切る感じに。
そんな可愛い音読に付き合ったあの日を懐かしっく思い出しながら、摘み草です。
すっかり開いたフキノトウではなくて、「よいしょ、よいしょとふんばるふきのとう」の蕾を探してね。

うちの森にびっしり芽吹いていて、もう大豊作。
かごいっぱいに摘めたので、大人は天ぷらと蕗味噌にしました。
電球の下で色が悪いけど、蕗味噌は美味しくてね。
ご飯にのせても、お豆腐にのせても、納豆に混ぜても美味しいのよね。

春の恵みをいただきます。
いま一度、懐かしくあの詩をおもいだしては、頭の中でリフレインしてました。
きっとそういうお母さん、多いんじゃないかな?
工藤直子さんの詩集「のはらうた」
たくさんの詩を子どもたちと読みながら、森を歩いた日が懐かしい。
いつの日か、孫とまた、「のはらうた」を謡いながら森を歩く日が来るといいなと思っています。
******* ふきのとう 工藤直子 ********
夜があけました
朝の光をあびて たけやぶのたけのはっぱが
「さむかったね うん、さむかったね」とささやいてます
雪がまだ少しのこって あたりはしんとしています
どこかがでちいさな声がしました
「よいしょ よいしょ おもたいな」
たけやぶのそばのふきのとうです
雪のしたにすこしあたまをだして 雪をどけようとふんばっています
「よいしょ よいしょ そとがみたいな」
ごめんね、と雪がいいました
「わたしもはやくとけて水になり とおくへいってあそびたいけど」
とうえをみあげます
「でも竹やぶのかげになってひがあたらない」
とざんねんそうです
すまない、と竹やぶがいいました
「わたしたちもはやくゆれておどりたい ゆれておどれば雪に日があたる
でもはるかぜがまだこない はるかぜがこないとおどれない」
とざんねんそうです
そらのうえでおひさまがわらいました
「おや はるかぜがねぼうしているな 竹やぶも雪もふきのとうもみんなこまっているな」
そこで南をむいていいました
「おーい はるかぜおきなさい」
おひさまにおこされてはるかぜは おおきなあくび
それからせのびしていいました
「や、おひさま や、みんなおまちどう」
はるかぜはむねいっぱいいきをすい ふうっといきをはきました
はるかぜにふかれて 竹やぶがゆれるゆれるおどる
雪がとけるとける 水になる
ふきのとうがふんばる せがのびる
ふかれて ゆれて とけて ふんばって もっこり
ふきのとうがかおをだしました
「こんにちは」
もうすっかりはるです