山に暮らしていると夏の木立の中を吹き抜ける風の音の変化にも、五感が働いて、一雨きそうだなぁなんて本能が呼び覚まされる。
そういう瞬間がとても心地よくて…。
下草狩りの終わった森の枝には、何年もの月日を思わせる苔。こういう風景も好きだ。
葉っぱをたたきつけるような土砂降りも、風をともなう横殴りの雨も、しとしと降る雨も、通り雨の乾いた土を煙たてるだけの小雨も楽しい。
ニュースの天気予報よりも、よほど自分の感性に自信がある。低気圧の頭痛、雨の降る前の古傷の疼きや、関節の痛みなどもその一つね。
エアコンがなくては生きていけない都会の生活から逃避して、山で過ごす夏の楽しみは、自分の五感が取り戻せる楽しみでもあるからね。
ここにも雨の日の雨音の話があって、茶道の季節をよむ話に素直に共感する一冊でした。
長くお茶を習う様子と、長く続けるということ、お茶の様子に自分の生きていく道を重ねていく主人公。
そしてそれが、日本人のもつ季節の移ろいへの感性に重なって、読後感がとても清涼。
おとなの夏休みに読むにはもってこいの一冊でした。
八ヶ岳の森には、はやくも秋のミズヒキ草が満開。小さくて目立たないけど、好きな花の一つです。