大好きな梨木香歩さんが、長いこと八ヶ岳に暮らしていることを知ったのはつい最近。
先日訪ねてた富士見のmountain bookcaseに置かれていた装丁の美しい箱入りの「
草木鳥鳥文様 (福音館の単行本)」をみて、その時は買わずに帰ったのだけど、どうしても気になってポチッと。
今時箱入りで表紙が布張りの本という贅沢な装丁に驚かされたけど、
福音館書店の月刊誌「母の友」に連載されていたものが本になったんですって。
これを趣味本と言わずなんと表現したら良いものか?
バードウォッチングが趣味というのも、嬉しくてどのページも惜しむように読みました。知っている鳥ばかりというのも嬉しい。
鳥見が好きならどれもお馴染みの日本の野鳥たち。
そしてそれにまつわる植物が配置されています。
鳥の絵は、なんとどれも引き出しの中に描かれているの。
ちょっと植物採集の標本みたいな鳥集めの趣向。
その鳥と植物について梨木香歩さんのエッセイが綴られているというしかけ。
趣味本と思ったらのはそんなわけなのです。
こちらは、まさに八ヶ岳の山小屋から発信されたエッセイ集。
古い山荘との出会い、老神学者の住んでいた家の話、薪ストーブにまつわる話、庭の話。
静かな山小屋の暮らしにはひとり居の孤独もあって、これは梨木さんが探求し続けていらっしゃるガルシア・マルケスの影響でしょうか?
私は、メキシコに暮らさなかったらマルケスを知ることもなかったなぁと思う。
エッセイのどれもが深淵で、人が時を重ね、年を経て思う思考の深さに驚かされます。
登場する植物の在りように、人の来し方を重ね合わせていたり、山小屋にやってくる小動物との関わりかたなどは、私も同じように思うことがあって、うん、そうなのよねと頷いたり。
住まいとの関わりも、最初は山小屋の前の持ち主の息遣いを感じ、次第に建物そのものへの愛着を深めたり、「家守奇譚」に登場したモデルとなった古民家が生きていると言った大工さんとのやりとりなど、作者が「家」を生き物のように愛おしく関わるようすがとても好きなところ。
「西の魔女が死んだ」は代表作ですが、この本が出たのは、助手をされていた河合隼雄さんに初稿を読んでもらい、河合さんが出版社に持ち込んで生まれた本というのも知りました。
今までのどの作品も単なる和製ファンタジーの域を超えた神話のような趣がある作品ばかりなのも頷ける。
好きな作家さんが、八ヶ岳、鳥、植物を題材に書いてくださって、とっても楽しい本読みの時間でした。
梨木香歩さんも、私と同じ歳なんだわね。これまた勝手にシンパシー。