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読んだ本 庄野潤三「鉛筆印のトレーナー」

この秋ハマった庄野潤三ワールド。
今週読んだのは、鉛筆印のトレーナー (P+D BOOKS)という本。図書館から借りて読みました。すでに書庫本でした。

その昔、私は図書館に勤務していて、図書館には一般のオープン書架と、古くなって利用者が少なくなった本は閉架の書庫に所蔵されている本がある事を知り、普通関係者以外は入れない書庫に潜って本を探す楽しみを満喫させていただきました。

特に古い雑誌コーナーの圧巻は、たまりませんでした。
お茶箱入りの古文書とか、古地図とか。こういうのは閲覧だけで貸し出しはしていないのね。
ベストセラーの本が山ほど並ぶ棚もあってね。過去のベストセラー本、窓際のトットちゃん、ソフィーの選択、五体不満足とかね。
市民のリクエスト数が増えると同じ蔵書が増えるのですよ。

図書館に来て、資料検索で読みたい本を探し、窓口でリクエストすると図書館員さんが書庫から出してきてくれますよね。大きな国会図書館のようなところでも15分くらいで探し出してくれますよね。ご利用になった事ありますか?

書庫当番の時は、書庫を走り回って探すのがとってもエキサイティングな仕事でした。資料番号で探し出すのね。これぞ分類整理の究極の技だったから、片づけが好きなわたしにはドンピシャの仕事でした。

話が本題から逸れてしまったよ。
読んだ本 庄野潤三「鉛筆印のトレーナー」_d0348118_18044352.jpeg
読んだ本に話を戻して。
題名は、「鉛筆柄」でも、「鉛筆マーク」でもなく「鉛筆印」。
加えてトレーナーっていう表現も時代を感じます。
今なら「鉛筆ロゴ入りスエット」っていうのかしらね。

前回は、作家の長女が南足柄に越して、到来物の宅急便のやりとりが話のメインでしたが、今度は、スープの冷めない距離の山の下(作家は生田の山の上に住んでいる)に住む長男、次男夫婦との交流の話。
次男のところに生まれた孫は初めての女の子、文子ちゃん、通称ふーちゃん。
ふーちゃんが3-4歳の頃の話。長男のところにも続いて女の子の孫が生まれます。

3日にあけず、作家の家にやってくるふーちゃん。
3歳児の一挙一投足をほのぼのと語っているんです。
ちょうどうちの初孫若さまと同じ年頃。
3日来ないと作家夫婦は何かを持って訪ねていくの。
老夫婦は、日々ふーちゃんのことを心配をします。

きょうは幼稚園に行きたくないらしいよ。
明日の遠足は晴れて欲しいわね。
おやつにカスタードプリンを作って届けよう。
ニオイダマが欲しいんだって。
今朝はちゃんと目を見て「おはよ」じゃなくて「おはようございます」って言ったね。
後ろ前かと思ったらポケットのある方が前だそうで、ちゃんと一人でズボンがはけましたね。
…などなど。
毎日のふーちゃんの小さな成長やひとコマをずっと夫婦で話しているだけの小説なんですよ。

山の上から山の下へのお届けモノもいっぱい。
それについてお嫁さんたちはきちんとお礼状やお礼の電話をしてきて、作家はいちいちそれを書いてます。

なぁーんにも事件は起こりません。
ただただふーちゃんを愛情たっぷりに見つめていくだけの話なの。
最後のほうは、じいじやばあばよりもお友だちと遊ぶのが楽しいふーちゃんは、
じいじとばあばにあっても、「こんにちは、さようなら」と言ってお友だちのところへ走り去ってしまったり。残念だった一瞬会ったふーちゃんに、がっくりしながらも目を細めるようにしているの。

当時はまだ固定電話の時代。
3歳のふーちゃんは、じいじやばあばが、あれこれ聞いても電話口でニコニコうなずいているだけらしい。それを横でママが、ふーちゃん頷いてますと伝えたり、本の後半では、一人前に電話の受け答えができるほどになっていく孫の成長の様子も、嬉しく語られているのね。

あぁ、どこの老夫婦もこうして、我が家の孫のことを気に留めて、愛情たっぷりに見守るよね。

コロナでご実家との交流も減っているだろうけど、若いパパやママも、ぜひぜひ孫の近況を知らせてあげて欲しいと思ったよ。

小さな人の暮らしや成長は、老夫婦には何にも変えられない楽しみですものね。
秋の夜長、寝る前に少しずつ読むのが楽しかったほのぼのの一冊でした。



by yukkescrap | 2021-10-26 18:13 | 好きな本スクラップ | Comments(0)

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