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読んだ本 新井満「自由訳 方丈記」

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。

方丈記の冒頭の文章。
高校生の時に暗誦課題で覚えたので、今でも諳んじる(そらんじる)ことができるけど、銘文の解釈ができていたとは思えないけどね。
この秋、下鴨神社のそばに古民家を求めて東京と京都の2拠点生活をはじめた本好きの友人(還暦を迎えての決心)のおススメ本。
鴨長明の方丈庵のレプリカを見学して、そこで手にとった新井満の自由訳 方丈記がとっても良かったのと言うので読んでみたのです。
(彼女はおひとりさまなので、このきっぱりした行動力にもびっくりでした。)
読んだ本 新井満「自由訳 方丈記」_d0348118_20373834.jpeg
今のこのコロナ禍にあって、今も昔も人は同じように悩み苦しみ生きかたを模索していたのだと思う。
解説にあるように、方丈記の前半は災害文学。
鴨長明は、20-30代を大火、地震、飢饉、疫病、遷都いう度重なる災難時代に生き、良いところの坊ちゃんで、ミュージシャンであり、随筆家、歌人というマルチな才能もあったんだけどね。

途中で色々嫌気がさして出家して僧になってエッセイストしながら山奥に庵を結び方丈記とあいなったわけですね。

庵を結ぶあたりは住宅論を展開。芸術論もあり、その後は人生論。

高校生のときは、口語訳とか品詞分解に没頭していたから、ナニガナンダカ?さっぱりわかりませんでした。今も原文で読めと言われたらよくわからないと思うのだけど、新井満さんのユニークな訳のおかげで、内容が実にすんなり入ってきました。

とはいえ、これはかなり老齢してからじゃないとなかなか解釈できない内容だとつくづく思いましたよ。今も高校生が受験用に読んでいるのよね。

夏目漱石は依頼を受けて英訳をしているんですね。

わたしは暮らしのついてのテーマの話が好きだから、方丈記の3メートル四方の庵についての章がいちばん楽しかったけどね。
孤高に生きるソローや、メイサートン、オキーフとか海外にも独居を美学に昇華させた作家はいっぱいいるけど、日本ならではの清貧の美学、孤高の精神性がよくわかる。

出家しても、孤高でも悩みは死ぬまで尽きないということもよくわかる。
愉快な古典解釈の一冊でした。


by yukkescrap | 2021-11-04 10:07 | 好きな本スクラップ | Comments(0)

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